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海に沈んでブックブック②
こんにちは、高幡教室の土井です。
現実世界に疲れると、どこか別の世界に飛んでいきたい心持500%くらいになりますよね。
ただ残念なことに人間って、そう簡単には変わらない内面の謎の強さがあるので、たとえタイムスリップしても、別の世界に飛んでしまっても、あんまり今とやってることは変わらないんじゃないかなぁ……とも思ってしまう。
消そうとしても、消せないもの、それが個性。
さて、今回のテーマは【とってもファンタジー】。
人生にはやはりワクワクが欠かせないでしょう。魔法とか使えたらいいのにねぇ。
●沢村凜(2014)『ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た』、角川書店
あらやだ表紙が可愛いわ。という、いわゆる「パッケージ選び」した作品。まあまあよくあるファンタジーものだろう、と思いながら読んでいたのですが、最後の方は思わず感慨深い気持ちになってしまった。意外と深読みできる作品なのではないかなぁと思います。
沢村さんの作品は登場人物の心情がとてもこまやかに表現されているのが魅力的ですね。
『通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする』と同時発売されてるんですかコレ…。表紙が兄弟みたいな感じなので、連続ものかと思いきや、世界観が全然違います。二つの作品を読み比べてみるのも面白いと思います、わたしはこちらの作品の方がゲーム感があって好きかなぁ。
●シャロン・シン/訳:中野善夫(1995)『魔法使いとリリス』、ハヤカワ文庫
最近人にすすめられて『ゲド戦記』シリーズを読んだのですが、読み進める中で頭の中によみがえってきたのが、宮部みゆきさんの『ブレイブ・ストーリー』とこちらの作品でした。
文字通り魔法使いのいる世界ですが、主人公のオーブリイと、不思議な女性リリスの心の揺れ動きが繊細に表現されているのがいいです。
作風というかイメージ的にはヨーロッパの上流階級チックな表現があったりするので、あのきらびやかなパーティーの場面とか映像化してほしい。
あと動物に詳しい人が読むと楽しめるはずです、各人物の動きの癖が伏線になっていて良い。変身の魔法を使うときの描写が、そんじょそこらの魔法ものよりもより理科的に描かれていて、そういうところがとっても奥深いんだなぁ。
●夢枕獏(2011)『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』、角川文庫
こちらの作品は映画化もされているので知ってる人も多いかと。
どう考えても人間の能力を超えている空海と、ちょっと気弱だけどがんばる惜しい男・橘逸勢が、異国情緒のあふれるシルクロードの重要な主要都市の唐で大暴れします。大暴れというか、巻き込まれ型不運というか……。
中国中国してるというよりかは、西アジアの香りを感じるようなシーンが多かった、姉さんかっこいい。あとはとにかく白楽天の「長恨歌」がたまらんのです。最後の吟詠場面が爽やか。
『陰陽師』シリーズもいいのですが、スケールの大きなファンタジーとなるとこの作品かなぁ。夏にどっかりと読書したい、そして「日本が舞台のものが読みたいわ!」という方は『陰陽師 滝夜叉姫』もオススメ。藤原秀郷がイケメンすぎる。あとは描写が描写なので、内臓がヒュンヒュンとして涼しくなれるかもしれない。いやちょっとグロいのが無理なんですよ、という人は『陰陽師 夜光杯ノ巻』で慣らすといいと思います、「月突法師」とか夏にぴったりのお話です。