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海に沈んでブックブック④
こんにちは、高幡教室の土井です。
夏期講習のさなか、さまざまな学年のたくさんの子達と接して、さまざまな喜怒哀楽の感情に揉まれるので、ウワーとなっています。感情の洪水に流されそう。
子どもだといっても、未成年だといっても、一個体の人間なのですよね。
自分たちなりの正義や道徳や、軸を持っていろいろ悩んだり怒ったり悲しんだりしている立派な人間。
そんな君たちに贈りたい、今回のテーマは【悩めるあなたへの処方箋】。
●菅野仁(2008)『友だち幻想』、ちくまプリマ―新書
ちくまプリマ―新書さんから出ている本です、友人関係に悩める方は読んでみたらいいんじゃないかと思います。
基本的にわたしはひとりでいるのが好きなので、そう悩んだ記憶はないのですが、世の中には大人になってからでも誰かと一緒じゃないとたまらない人もいるのだと知って驚くこともありました。
意外と難しいのですが、自己と他者の区切りってあいまいだったりするんです。だから、「自分のことをわかっちゃくれないんだ!」と怒りを感じることがあったりしますが、親だろうが教師だろうが、親友だろうが何にせよ『ワレワレは個なのよ』というのを再認識させてくれる一冊。
●仲正昌樹(2004)『「みんな」のバカ!無責任になる構造』、光文社新書
これもまた集団に一石を投じる一冊。これは自分が所属するグループ云々というよりかは、集団とはなんなのでしょうね、という哲学的な内容もぶっこんでくるので、高校生以上向けでしょうか。
「みんなが〇〇だから……」なんて言い訳、大人も子どももウッカリ使っていたりしますよね。ところで「みんな」って誰ですか?という一石を投じる一冊。
中身云々はあんまり関係ないのですが、光文社新書の独特な感触の表紙とデザイン、けっこう好きなんですよね。
●重松清(2007)『くちぶえ番長』、新潮文庫
入試問題でもちょこちょこ見かける、定番の著者ですね。
ちょっと気弱で流されがちな主人公ツヨシと、自分の信念をつらぬく強さをもった転校生のマコトを中心に話が進む物語です。
マコトの生き方がかっこいいですが、ツヨシも少しずつ変わっていくのもいい。弱い自分を、いつか抜け出すことができそうな気がする。勇気を出すのは、思っているほど難しいことじゃないのかもしれない。
重松作品は読みやすいので、小学生の間でも人気があったりしますが、おとなが読むのもおすすめです。なつかしい学校生活の感覚がよみがえります。
同じ著者の作品で『その日のまえに』(2005)、文芸春秋など、がありますが、そちらの方はやや大人向け。ですが、朝日をしっかりと浴びて、生きていることをかみしめられるようになりたい。そんな作品になっていますのでこちらもどうぞ(受験科6年生は夏期講習で扱いましたね)
本は読んでもお腹がふくれるわけではないし、読んでお金が舞い込んで来たり、国語の成績が急上昇したり、白馬の王子様やアラブの石油王に出会える…というようなものではありません。実用書でなければ、役立つことなんて早々ありません。
だけど、何かふとした瞬間に、本の中のささやかな一文でハッとときめいたり、新しい感情を知ったり、今までにない道が開けるような思いがしたり、そういう瞬間が必ずどこかであるはずです。
たまたま手にとった一冊が、人生を変えることだってなきにしもあらず。
生きていく中で、何度も読み返すくらい大事にできる一冊と出会うというのは、とても難しいらしいです。
でも、探していくうちにきっと本の方が呼んでくれます。
みなさんもいつかそんな本に出会えるといいですね。
ちなみに連続使用していた題名は、小学生の頃に同級生が言ったダジャレを、ふと思い出したものです。
中学受験のために塾に通って勉強してる子だったなあ……
まさか自分がそういう子を教える立場になるとはなあ……
人生とは本当に味わい深いものです、しみじみ。