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ことばのことばっかり② ~唇に歌を、心に花を~
こんにちは、高幡教室の土井です。
子どもの頃に不思議に思うことがありまして。
初代ポケモンでは、サファリゾーンで入れ歯を落としてしまった館長さんが、「言語ふがふが状態」になってしまって途方にくれているという場面があります。
やたら「ふぁーふぁー」言う状態なのですが、歯がないからといってそんなに「f音」が強調されるのか?と不思議でした。
子どもの頃に「入れ歯がない人の真似」と称して、ふぁーふぁー言う遊びをしていたのですが、よく考えると不自然じゃないですか?
歯がないからってf音を多用することになるのか…?歯…関係ないよね…?
で、この疑問を自己解決した一冊の本が、山口仲美(2002)『犬は「びよ」と鳴いていた―日本語は擬音語・擬態語が面白い―』、光文社新書。
そこで紹介されている、むかしのなぞなぞがこちら。
★「母には二度逢いたれども父には一度も逢わず」 これなーんだ?★
文字史料のおもしろいところは、ふとした瞬間に「聴覚的」な要素が再現されることです。
文字は文字のみにあらず…。
わたし自身はどちらかというと文字を「視覚的」なものととらえることが多いので、このなぞなぞが示すことは非常におもしろいことだと感じました。
ちなみに江戸時代とかそれくらいの古いなぞなぞなので、「英語でマザー…?」とかは考え過ぎです。オランダ語でも中国語でもありません。
さて、なぞなぞの正解は「唇」でした。
古い日本語は今とは発音が違っていて、「はひふへほ」の音が「ふぁふぃふふぇふぉ」の音に近かったようです、ですので「母」という言葉が「ふぁふぁ」、唇を使うような音だったというのが示される一例なのかなぁと思います。織田信長の出身地の尾張も、古い音だと「おふぁり」に近い発音だったと数年前にテレビで専門家が言ってました。
「父」は唇を使わなくても発音できますよね。
昔の日本語の香りを断片的に感じられる、素敵なことです。
入れ歯がないからふぁーふぁー言ってるのではなく、上の世代とではわずかではあるけれども言葉の発音が異なっていて、自分から見たおじいちゃんおばあちゃん世代の日本語そのものがf音が目立つように聞こえていたんではなかろーか。
という風にわたしは考えています、本当のとこどうなのかはちゃんと調べていないのですが。
あとは「んぐ」の音も今よりも強かったイメージがありますが、それについてはまたいつか。
さて、ここからは蛇足ですが、わたしが子どものときの国語の教科書に、こんなことばが載っていました。
「ふぁっするふぁんばとんびふぁずめ」
記憶が定かではないのですが、秋田県の方言を使っての、体育での一コマで発せられることばだったと思います。
いわゆる方言と呼ばれている地域ごとの言葉には、古い時代のなごりが感じられるなあ、と今になってしみじみと思います。
「ふぁ」、の部分を「は」に置き換えると意味をつかみやすいかもしれません。
そんなことはない?