高校部(東進)
『街とその不確かな壁』を読んで
こんにちは!志學舎日野教室の村山です。
私は最近、村上春樹の『街とその不確かな壁』を読みました。概要は次の通りです。ある日「僕」は「君」から「君」の影が存在するという「街」の話を聞きます。「僕」はその後、「君」との接点を模索するために「君」の影が存在するという町に出かけるという話です。私はこの作品を「僕」という実体が「君」という影を媒介として観念としての「君」に出会う物語を通して、現代の実存を問う小説だと読みました。
私が初めて読んだ村上春樹の小説は『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』でした。この小説は二人の人間の主観の行き来を通して二人が生きる世界の実体を把握するというような構造で書かれた三人称小説です。当時の私は彼の小説の構造の新鮮さに驚きました。というのは彼の小説が、例えてみれば、J・S・ボルヘスのポストモダンとガルシア・マルケスのマジックリアリズム、それから安部公房のシュールリアリズムを融合させたような非常に独特な体系をとっていたからです。これはリアリズムと寓話性、ファンタジー要素とミステリー要素を融合的に組み合わせた前衛的な手法で個というものを実体的に理解していくというスタイルと言い換えてもいいかもしれません。
村上春樹の作品が世界中で読まれるのには様々な理由があると考えますが、彼の小説が時として人が普遍的に持つ精神世界の混沌や時間的志向性、記憶や恐怖という根本的なファクターをオムニバスに融合させ、それにより人間の精神の集合的無意識に迫る瞬間を持つことが理由の一つだと考えます。だから我々は彼の作品を読んだときに深い感銘とある種の懐かしさを覚えるのだと思います。彼の作品は人々が個というものを世界という複雑系の中で相対的に理解するためのツールとなり、その道具性が作品に色あせない魅力と機能を与えているのです。
このような村上春樹の独自のスタイルとその世界観の魅力は『街とその不確かな壁』においても存分に発揮されています。皆さんにも近代の新しい言語芸術として、この作品を堪能していただきたいです。
〒191-0061 東京都日野市大坂上1-32-1久世ビル2F
[志學舎]TEL:042-586-1515
twitter → https://twitter.com/sigakusyahino
instagram → https://www.instagram.com/sigakusyahino/
[公式]志學舎Youtubeチャンネルもよろしく!
〒191-0061 東京都日野市大坂上1-30-19シルバーアロービル2F
[東進]TEL:042-581-6474
twitter → https://twitter.com/sgs_toshin
instagram → https://www.instagram.com/toshinhino
[公式]志學舎東進Youtubeチャンネルもよろしく!
9/1より2学期スタート!
志學舎ではSNSで情報発信中!ブックマーク登録、チャンネル登録をお願いします!
人気ブログランキング
↑受験カテゴリー1位!応援クリックよろしく!
にほんブログ村
↑こちらも頑張ってます!応援クリックよろしく!